一緒だよ candy boy

                     作者 アオイ


「くぅぅ」

課題がようやく終わり、私は固まった体を解しながら携帯に表示されている時間を見た。そろそろバイトが終わる時間か。課題も終わった事だし、ユキちゃんを迎えに行くか。

ユキちゃんは駅の中にあるケーキ屋さんでバイトをしている。

駅は会社帰りのサラリーマンなどでごった返していた。私は家に帰る人達とは逆に歩き、バイト先へ向かった。

「えっ」私は驚いた。

ユキちゃんが見知らぬ男子学生と話をしていた。相手は何やら真剣な顔でユキちゃんに何か言っている。

……もしかして告白!? 確かにユキちゃんは可愛いし、優しいし、面倒見もいい、妹の私が言うのもなんだけど。ユキちゃんの事だから断るはず、でも、正直ユキちゃんが男や誰か他の女の子に告白されているのは嫌だ。ユキちゃんは私の姉で大切な人で、誰にも渡したくない…けど…………ユキちゃんは女の子だ、いずれは誰かと結ばれる日がくるかもしれない……………その時、私は素直に祝福出来るのかな、素直に喜べるかな。たぶん、無理かもしれない…………ああ、もう最低だな私は。

予想通り、男子学生はユキちゃんにふられたらしく、がっくり肩を落としながら改札口の方へ歩いて行ってしまった。

ユキちゃんは私に気づき駆けよってきた。

「もしかしてカナちゃん、見てた?」

「う、うん見てた」

「大丈夫だよ、ちゃんと断ったから」

「う、うん」

ユキちゃんはいつもの笑顔を私に向けた。私はユキちゃんの笑顔を見て罪悪感を感じた。「どうしたの、カナちゃん?」ユキちゃんは心配そうに私の顔を覗いた。

「ああ、うん、何でもない」

「ええ、絶対カナちゃん私に何か隠してる」

「別に、隠してなんかないよ」

「じゃあ、教えて」

「えっ、だから…別に…ユキちゃんに隠してなんか…」

「ウソ、カナちゃん私にウソついてる」

「だから、ウソはついてな…い…」ユキちゃんは不満に満ちた顔をした。

「カナちゃんのウソつき、教えてもらうまで私一言もカナちゃんと話さないんだから」

うわぁ、出た。ユキちゃんのいじけモード、こうなると手がつけられないんだよね。…話すしかないか。私は、諦めてユキちゃんに話す事にした。

「あのさ、今さっきユキちゃん告白されてたでしょ」

「うん」

「その時、私さふと思ったんだ、これから先、ユキちゃんが誰かと結ばれた時、素直に祝福出来るかなって」

「カナちゃん…」

「たぶん、無理かもしれない、私にとってユキちゃんは大切な人だから、だから…私、そんな自分が…最悪に思えて」

「……」

ハァ、やっぱりユキちゃん私の事、最悪な妹だと思ったかな。

不意にユキちゃんの手が私の手を握った。

「カナちゃんは最悪なんかじゃないよ、私だってカナちゃんが誰かと結ばれた時、祝福出来ないかもしれない、でもねカナちゃん、こう思えば大丈夫だよ」

「何?」

「私達はお互いに大切な存在だから私達の絆はそんな簡単に壊れはしないって」

「…ぷ」私は思わず笑ってしまった。

「笑わないでよ、カナちゃん」

「だってユキちゃんがいきなり恥ずかしいセリフを言うんだもん」

「もぉー、カナちゃんの為に言ったのに」

ユキちゃんは頬を膨らまて怒ってるんだけど全然恐くなくてむしろ可愛いい。でも、なんだか気持ちが楽になった気がする。さっきまで自分の事、最悪だと思ってたのがバカバカしくなってきた。私は今の気持ちをユキちゃんに言った。

「ユキちゃん、ありがとう」

「カナちゃん…」ユキちゃんは優しく微笑んだ。

私達は手を繋いで帰った。お互いの手の温もりを感じながら。

「ユキちゃん」

「何?カナちゃん」

「ずっと一緒だよ」